アニメ雑文>エッセイ


第2期はなぜつまらないか

 テレビアニメの中には、第1期がかなり面白かったにもかかわらず、第2期になると、がっかりするほどつまらないというケースが少なくない。80年代のアニメでは、前半はなかなか調子が出なかったのに、後半になると、アニメーターがノッてきたのか、立て続けに秀作が生まれることがあった(押井守時代の『うる星やつら』や『ダーティペア』『魔法の天使クリィミーマミ』など)。しかし、00年代以降は、各シーズン内での質が安定する一方で、(『Fate/Zero』のように当初から計画して2シーズンに分割した場合を除き)第1期から第2期への落差が大きくなったように思われる。もちろん、第2期の方が面白いこともあるが、一般に差は小さい。私が第2期の方を高く評価するシリーズには、『さよなら絶望先生』『攻殻機動隊S.A.C.』『ARIA』『DARKER THAN BLACK』などがあるが、いずれも、第1期の方が好きだという人が少なくないだろう。

 第2期がつまらなくなる原因には、次のようなものが考えられる。

 (1) 原作のネタ切れ : マンガやラノベの若手作家は、編集者に注目されようと、こり過ぎとも思える奇妙なプロットを採用することが少なくない。こうしたプロットに合致するようなキャラを登場させストーリーを組み立てると、そこそこに面白い作品が生まれる。だが、人気が出たので続編を…となっても、すでにネタは使い尽くされており、第1作のプロットに合わせたキャラもうまく生かせない。こうした原作をそのままアニメ化すると、第2期以降はどうしてもぱっとしない結果に終わる。『バカとテストと召喚獣』『僕は友達が少ない』『君に届け』『のだめカンタービレ』『中二病でも恋がしたい!』『デュラララ!!』などが、その例。『暗殺教室(第2期)』『神のみぞ知るセカイ(第3期)』ラストのムリヤリ感も、最初のプロットが奇抜すぎて落とし所が見つからなかったためだろう。

 (2) スタッフ・制作会社の変更 : 制作体制が変わることは、当然、作品の質に大きく影響する。『みなみけ』『GUNSLINGER GIRL』『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』では、制作会社の変更に伴い監督や脚本家が交代した結果、第2期は別作品かと思えるほどつまらなくなった。『狼と香辛料』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』は、制作会社が変わっても監督・シリーズ構成が共通するケースだが、前者で作品の質が保たれたのに対して、後者では大幅に低下しており、外からは窺い知れない事情があったと推測される。第1期を支えた脚本家が降ろされてつまらなくなったケースには、『交響詩篇エウレカセブン』がある。

 (3) あざといウケ狙い : 第1期が予想以上に人気を呼んだ場合、何がウケたのかスタッフ自身がわからず、「ファンはここを面白がったのだろう」と思われる部分を強調するあまり、作品のバランスが崩れてしまうケースがある。『ストライクウィッチーズ』のパンツ丸出し、『ご注文はうさぎですか?』の極端な天然ボケ、『魔法少女リリカルなのは』の激しい戦闘魔法−−といった部分を第2期で強調しすぎて、あざとさが目に付く結果となった(『リリカルなのは』は、第2期よりも第3期での落ち込みが大きい)。

 (4) 無理筋の第2期制作 : もともと第2期が作れる状況になかったにもかかわらず、無理に第2期を制作して失敗することも。『PSYCHO-PASSサイコパス』は、虚淵玄のすばらしい脚本あってこその傑作だったが、人気が出たので同時期に劇場版と第2期を作ろうとしてスケジュールに無理が生じ、脚本家が交代した結果として第2期後半でストーリーが破綻した(第1期の人気が残虐描写にあると勘違いしたせいもあり)。『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』は、第1期制作前にスタッフによって基本プロットが練り上げられていたものの、付け足しのように作られた第2期には軸になるプロットがなく、脚本家は主要キャラを殺すことしか思いつかなかったようだ。本来の意味での第2期ではないが、『BLOOD+』に連なる BLOOD シリーズの続編として企画された『BLOOD-C』は、ストーリーを前作とは無関係の作家に任せたせいか、シリーズの基本プロットが全く生かされておらず、単なる「妖怪と少女のバトルもの」に留まった。

(2017年08月12日)


【補記】本論執筆後にも、『Wake Up, Girls!』→『Wake Up, Girls! 新章』、『けものフレンズ』→『けものフレンズ2』(いずれも、上記(2)のケース)、『STEINS;GATE』→『シュタインズ・ゲート ゼロ』(上記(4)のケース)など、第2期になって大幅に質が低下するケースがあった。